また、テレワークが普及している他業界に比べ、建設業界では導入が遅れているため、柔軟な働き方ができず、長時間労働が続くという声も少なくありません。
そこで今回は、建設DXがどのようにこれらの課題を解決し、業界全体を変革することができるのか、また導入事例や注意点などについて詳しく解説します。
【目次】
建設DXとは?
建設DXとは、建設業界における業務プロセスをデジタル技術によって効率化し、生産性向上を目指す取り組みです。
そもそも、DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、IT技術を活用して従来の業務を抜本的に改革し、価値提供の方法やビジネスモデルを変革することです。
建設DXでは、クラウドやAI、IoTなどの技術を活用し、設計、施工、保守といった一連の作業をデジタル化します。
これにより、作業効率が向上し、コスト削減や安全性の強化が図られ、さらにプロジェクト全体の透明性や従業員同士のコミュニケーションの向上にも役立つのです。
建設業界特有の課題、例えば長時間労働や人材不足といった問題に対してもDXは解決策を提供し、業界の持続的な発展をサポートすることができます。
関連記事:生産性向上が企業活動で求められている!取り組み方や成功のポイントも解説
建設DXが注目される理由と業界の課題
ここでは、建設DXが注目される理由と業界の課題について、以下の5点を解説します。
- 人材不足の深刻化
- 業界を圧迫する低い生産性
- 対面主義とテレワーク導入の遅れ
- 働き方改革の推進
- 安全管理の強化
1つずつ見ていきましょう。
人材不足の深刻化
建設DXが注目される理由の1つ目は、人材不足の深刻化です。
建設業界では、年々高齢化が進み、新たな労働力の確保が難しくなっています。
若年層の建設業界への参入が少なく、特に現場での技術を持つ熟練労働者が不足しています。
人手不足と従業員の高年齢化は、プロジェクトの進行に深刻な影響を及ぼし、その結果作業効率の低下や品質管理の困難を引き起こしています。人材不足は、業界全体の成長を妨げる大きな課題です。
業界を圧迫する低い生産性
建設DXが注目される理由の2つ目は、業界を圧迫する低い生産性です。
建設業界は他の産業と比べて生産性が低く、これは業界全体の競争力を弱める要因となっています。
プロジェクトが計画通りに進まず、無駄な労力や時間がかかることが多いため、結果としてコストが増加しています。
低い生産性は、業務の進行にも大きな影響を与え、建設業界全体の持続可能な成長を阻害する深刻な問題です。業務のDX化により生産性を向上させることは、業界全体の課題となっています。
対面主義とテレワーク導入の遅れ
建設DXが注目される理由の3つ目は、対面主義とテレワーク導入の遅れです。
建設業界では、対面での業務が長く続いてきたため、テレワークの導入が遅れています。
現場での作業が極めて多いことに起因しており、柔軟な働き方が難しい状況です。このため、特に若年層や子育て世代の就職が進まず、結果的に人材確保に苦労しています。
DXの推進により、現場とオフィスの業務連携をデジタル化し、テレワークの導入を進めることが必要とされています。
働き方改革の推進
建設DXが注目される理由の4つ目は、働き方改革の推進です。 建設業界は、長時間労働が常態化しており、働き方改革が急務となっています。
過酷な労働条件は、従業員の健康やモチベーションに悪影響を及ぼし、若年層の業界離れを引き起こす原因です。
業務の効率化や労働時間の短縮が求められており、DXの導入によって働き方を改革し、柔軟な労働環境を実現することが期待されています。
労働環境の改善は、業界の将来的な発展にも不可欠です。
安全管理の強化
建設DXが注目される理由の5つ目は、安全管理の強化です。
「安全は全てに優先する」の言葉の通り、建設現場では、安全管理が最優先されるべきですが、依然として事故やトラブルが頻発しています。特に安全対策が不十分な現場では、従業員の命に関わるリスクが伴い、業界の信頼性を損なう原因となっています。
効果的な安全管理の強化は、従業員の安全を守り、業界全体の健全な発展を支えるために不可欠です。DX技術を活用した安全管理システムの導入が今後の課題です。
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建設DXの市場規模は?
建設DXの市場は、デジタル技術を活用して建設現場の自動化や効率化を目指す取り組みの中で急成長しています。建設DXの市場を構成する、主要な技術は以下の5つです。
- 自動化
- 遠隔操作
- 遠隔臨場
- ドローンの活用
- 建設用3Dプリンター
2024年には市場規模が580億円以上に達すると予測され、これらの技術は多くの企業で実証実験が進行中です。さらに、国土交通省が進める「i-Construction」などの政府施策も後押しし、技術の導入が加速しています。
2030年には市場規模が1,250億円に達する見通しです。特にドローンや遠隔臨場技術はすでに現場での実装が進んでおり、今後も安定した成長が期待されます。
一方、自動化技術や3Dプリンターなどはまだ実証実験段階であり、今後の成長が見込まれています。
これらの技術は労働力不足や現場の効率向上に大きく寄与し、建設業界の将来に向けて欠かせない要素となっていくでしょう。
建設業がDX化を導入するメリット
ここでは、建設業がDX化を導入することで得られるメリットについて、以下の5点を解説します。
- 業務効率の向上
- コスト削減の実施
- 品質管理の強化
- 安全性の向上
- 環境への配慮
1つずつ見ていきましょう。
業務効率の向上
建設業がDX化を導入するメリットの1つ目は、業務効率の向上です。
DX化により、建設現場の業務プロセスがデジタル化され、これまで手作業に依存していた部分が大幅に効率化されます。
データの一元管理により、各プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで確認でき、計画の調整がしやすくなるのです。これにより、プロジェクトの遅れを防ぎ、より迅速に作業を進められるため、納期短縮が実現します。
業務の標準化も進むことで、全体の作業効率が向上し、プロジェクト全体の生産性が向上します。
コスト削減の実施
建設業がDX化を導入するメリットの2つ目は、コスト削減の実施です。
DX化により、デジタルツールを活用して無駄を最小限に抑えることが可能です。例えば、材料の消費量を正確に把握し、過剰な発注を防ぐことでコストを削減できます。
また、現場の進行状況をデジタルで管理することで、工事ミスを減少させ、修正にかかる余分なコスト削減が可能です。
さらに、労働時間の効率化もDXにより実現され、人件費の削減にもつながります。
品質管理の強化
建設業がDX化を導入するメリットの3つ目は、品質管理の強化です。
DXを推進することで、リアルタイムでデータを収集・分析することが可能になります。これにより、設計段階から施工までの各工程で発生する問題を迅速に発見し、適切な対応をとることができます。
デジタルツールを使うことで、品質基準を一貫して保つことができ、検査や検証作業の効率も向上します。
結果として、製品の品質向上につながり、顧客の信頼を獲得することができます。
安全性の向上
建設業がDX化を導入するメリットの4つ目は、安全性の向上です。
安全性の確保が重要な課題である建設現場において、DX化の導入は、センサーやIoT技術を活用した現場の安全性のリアルタイムな監視を可能にします。
これにより、危険な状況を事前に察知し、迅速に対応することができるため、事故を未然に防ぐことにつながるのです。
また、危険エリアの可視化や作業員の位置情報を活用することで、現場全体の安全管理が強化され、従業員が安心して働けるようになります。
環境への配慮
建設業がDX化を導入するメリットの5つ目は、環境への配慮です。
建設DXは、環境保護にも大きく貢献します。デジタル技術を活用することで、エネルギーや資源の使用を最適化し、無駄を減らすことができます。
例えば、建設材料の使用量を精密に管理することで、廃棄物の削減を図り、環境負荷を低減することが可能です。
また、効率的な設計・施工プロセスにより、温室効果ガスの排出量も削減できます。これにより、SDGsなどにも配慮した持続可能な建設プロジェクトの実現が期待されます。
建設DXのカギを握る、BIMとCIMとは?
ここでは、建設DXのカギを握る、BIMとCIMという技術について解説します。 1つずつ、見ていきましょう。
BIMとは?
BIM(Building Information Modeling)とは、建物を3Dモデルとしてデジタル化し、設計から施工、管理までを一元化する技術です。
例えば、建物を積み木のように細かくデジタルで組み立て、設計者や施工業者がリアルタイムで協力し合うことができます。
部屋の配置や配管のシミュレーションができ、設計段階で問題を早期に発見できるため、施工中に「ここが間違っていた」というミスを減らし、作業の無駄やコストも削減できます。
実際の現場でも、建物の3Dモデルを使いながら、計画の精度を高めることで、工期を短縮し、よりスムーズにプロジェクトを進行することができます。
CIMとは?
CIM(Construction Information Modeling)は、インフラの建設における3Dモデルの活用技術です。
道路や橋などの大規模な構造物の設計を、あたかもシミュレーションゲームのように、仮想空間で詳細に確認できます。例えば、橋を架けるときに地形との関係を事前に把握し、橋の最適な位置や高さを検討することが可能です。
CIMにより、設計ミスを減らし、実際の工事がスムーズに進むだけでなく、コスト削減にもつながります。
CIMは、施工後のメンテナンスにも役立ち、長期的な視点でインフラの品質と利便性を向上させる重要な技術です。
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建設DXの取組事例や成果の出ている企業
ここでは、建設DXの取組事例や成果の出ている企業について解説します。
- 油圧ショベルの自動運転システム
- 山岳トンネル工事における遠隔操作
- AR機器を活用したバーチャル現場見学会
- 自律飛行ドローンを利用した坑内巡回システム
- 3Dモデルを活用した施工管理
1つずつ、見ていきましょう。
油圧ショベルの自動運転システム
株式会社安藤・間では、油圧ショベルの自動運転技術を開発し、建設現場での省人化や効率化を目指しています。
特に、土砂の積み込み作業において、自動運転システムがレーザスキャナやカメラを使って土砂の形状やダンプトラックの位置を自動で認識します。オペレーターの動作データを元にショベルが自動で動作し、土砂の積み込み作業を正確に行います。
また、安全性も重視され、緊急時にはタブレットや無線コントローラを使って自動運転を停止することが可能です。この技術により、建設現場での労働力を削減しつつ、作業の精度や安全性を向上させることが期待されています。
実際の現場で試験運用が行われ、約2週間のテストで問題なく運用できたため、今後のさらなる導入が期待されています。
山岳トンネル工事における遠隔操作
株式会社熊谷組では、遠隔操作を活用して、工事作業を安全に行う技術を開発しました。
山岳トンネル工事における遠隔操作の事例では、爆薬の装填やコンクリートの吹付け作業を遠隔で操作することで、作業員が危険な場所に近づくことなく安全に作業を進める技術が開発されています。
例えば、爆薬の装填システムは、切羽から1.5m以上離れた場所で操作が可能で、作業時間を約45%短縮しました。
また、遠隔操作の吹付けシステムは、オペレーターが離れた場所からコンクリートを吹き付けることで、切羽崩落のリスクを回避しながら作業を行える仕組みです。
この技術により、作業員の安全性が大幅に向上し、作業効率の改善にも貢献しています。
AR機器を活用したバーチャル現場見学会
鉄建建設株式会社は、AR(拡張現実)技術を活用したバーチャル現場見学会を実施し、遠隔地からでもリアルタイムで現場状況を体験できる仕組みを提供しています。
具体的には、AR機器「Trimble SiteVision」を使用して、設計モデルと実際の現場映像を組み合わせて表示することで、遠隔地の参加者にも現場の進捗や計画をリアルに体験してもらうことが可能です。現場を訪れる必要がなく、時間や移動コストを大幅に削減できます。
また、ウェブ会議を通じて現場の状況を映像で共有し、建設プロジェクトの進捗状況や計画に関する詳細な情報を参加者とリアルタイムで確認することができ、参加者はより具体的なイメージを持ちながら議論を進められます。
この取り組みでは、スケジュール調整が容易になり、現場見学の自由度が向上しました。
自律飛行ドローンを利用した坑内巡回システム
青木あすなろ建設株式会社は、自律飛行ドローンを活用して山岳トンネル内の定期巡回点検を省力化し、効率的にデータ収集を行っています。
従来の点検作業は、職員が暗い坑内を移動しながら目視で確認する必要があり、多くの時間を要していましたが、このドローンシステムを導入することで、遠隔から安全に効率的に点検が可能となりました。
ドローンは事務所からの遠隔操作で自動巡回し、撮影映像をリアルタイムで確認できるため、作業の生産性向上が実現されています。
通信環境の整備も課題でしたが、広域メッシュWi-Fiの導入により、安定した自律飛行が可能になりました。
3Dモデルを活用した施工管理
東亜建設工業株式会社は、桟橋補修工事に3Dモデルを導入し、設計変更に迅速に対応するなどして施工管理の効率化を図っています。
この3Dモデルは施設全体をデジタル化し、仮設足場や支保工の構造を正確に表示することで、作業員が現場の状況を具体的に把握できるようにしました。
また、モデルには施工進捗や品質、写真などの管理情報が付加され、日々の管理業務が視覚的に分かりやすくなっています。
さらに、工事完了後はこのデジタルデータを施設管理者に引き渡し、施設の定期メンテナンスや予防保全に活用できるようにしています。この技術により、安全教育も視覚的かつ実践的になり、事故防止や作業効率の向上を図ることができました。
関連記事:現場DX推進で実現!生産性の向上と課題解決の方法を徹底解説
建設DXが進まない理由と対処法
ここでは、建設DXが進まない理由とその対処法について、以下の4点を解説します。
- 技術導入のコスト
- 従業員のスキル不足
- 既存の業務フローへの抵抗
- 安全性や信頼性への懸念
1つずつ見ていきましょう。
技術導入のコスト
建設DXが進まない理由の1つ目は、技術導入のコストです。 建設業界でもデジタル技術を導入するには大きな初期投資が必要です。
特に中小企業にとって、最新技術の導入は資金的な負担が大きく、投資に対するリスクが高いと感じられます。このような問題に対しては、補助金や助成金といった政府のサポートを受けることで費用の負担軽減が可能です。
また、サブスクリプション型のサービスの利用や、クラウド技術の導入によって、初期投資のハードルを下げることができます。
こうした柔軟な方法を利用することで、多くの建設会社が技術を導入しやすくなります。
従業員のスキル不足
建設DXが進まない理由の2つ目は、従業員のスキル不足です。 DXを効果的に進めるためには、従業員の能力や理解度が非常に大切です。
例えば、新しい機械を導入したとしても、従業員が使い方をよく理解していなければ、機械は宝の持ち腐れになってしまいます。
従業員に対する適切な研修プログラムやトレーニングを提供することで、新しいデジタル技術を効果的に使いこなし、作業効率や品質を向上させることができます。
現場での実践的なトレーニングを重視し、実際にシステムや機器を操作する機会を増やすことで、従業員のスキルを高めることができ、DXのスムーズな導入を進めることができるのです。
既存の業務フローへの抵抗
建設DXが進まない理由の3つ目は、既存の業務フローへの抵抗です。
建設業界は従業員の高齢化が進んでおり、従来の業務フローや慣習を変えることに対する強い抵抗感が根付いています。新しいデジタル技術に対する不安がDX推進の妨げとなるケースも少なくありません。
解決策としては、DXの具体的なメリットを段階的に示し、導入プロセスを小さく始めることが効果的です。
徐々に変化を進めていくことで、従業員の不安を取り除き、反対意見を減らしていくことが可能です。
安全性や信頼性への懸念
建設DXが進まない理由の4つ目は、安全性や信頼性への懸念です。 建設業界では、安全性や信頼性が最優先されます。
そのため、新しいデジタル技術に対して慎重な姿勢が取られることが多く、導入が遅れる要因となっています。この課題に対しては、まずは小規模のプロジェクトで技術を試験的に導入し、安全性と信頼性を十分に検証することが有効です。
小さな実証実験を通じて得た成果に基づき、技術の効果を実証することで、組織全体への普及が進むでしょう。
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まとめ
今回は、建設DXが注目される理由や業界が抱える課題、そしてその解決に向けたBIMやCIMの役割、プロジェクトが進まないときの対処法などについて詳しくご紹介しました。
建設DXは、業務効率や安全性、コスト削減に大きく寄与し、業界全体の変革を促します。 本記事を参考に、デジタル技術を活用して競争力を高め、未来の建設業界をリードする一歩を踏み出しましょう。
まずは自社での導入可能性を検討し、建設DXの波に乗り遅れないことが大切です。
5分でわかる2024年ビジネスコミュニケーション利用実態調査
この資料はビジネスコミュニケーションツールの導入状況やコロナ前後での導入状況の変化、またツール利用者の悩みや不満点といった生の声を確認できます。
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