しかし、問い合わせの内容は同じようなものが少ないとはいえず、担当者は、同じ質問に対して個別に回答している懸念があります。
このような状況に対して社内FAQの導入は改善をもたらし、問い合わせに対する回答業務負担を大幅に削減する効果が見込めます。
そこで今回は、社内FAQの基本概要、作成するメリット・デメリット、作成の手順、便利なツールを解説します。
【目次】
社内FAQとはなにか?
社内FAQとは、従業員向けに作成した、よくある質問とその回答を整備した情報です。社内FAQを活用するシーンは、定型業務への質問に対する回答が挙げられます。
たとえば、総務関連の部署には「入社・退職・休職・出産・育児休暇」などに対する質問が多く寄せられます。内容が同じ質問を受けることも少なくありません。
総務関連部署では、従業員のライフステージに関する手続きの手順などが整備され回答は定型化されています。
そのため、社内FAQは、個別回答の必要性が低い質問に対して、あらかじめ回答を用意し、担当者が介入することなく問題を解決するための手段の1つといえます。
なお、そもそもFAQとは、「Frequently Asked Questions」の単語の頭文字を取った語句で、「エフエーキュー」と読みます。質問に対して、一問一答形式で回答するもので、一般的に企業のサイトなどにある「よくある質問」が良い例です。
FAQと良く似た語句にQ&Aがあります。FAQとQ&Aでは、FAQが寄せられた質問をベースに回答を作成し、Q&Aは想定される質問を予想し回答を作成するという違いがあります。
そのためFAQは、より質問者側の立場に立った回答になっているといえます。
関連記事:FAQとは何か?意味・種類・メリット・導入効果を高める方法を解説!
社内FAQを作成するメリット
ここでは、社内FAQを作成するメリットについて、以下の3点から解説します。
- ナレッジ共有が可能になる
- 業務時間外でも対応が可能になる
- スピーディーな問題解決が可能になる
1つずつ見ていきましょう。
ナレッジ共有が可能になる
社内FAQを作成するメリットの1つ目は、ナレッジ共有が可能になることです。
ナレッジが共有されず業務が属人化している場合、「Aさんに聞かないとわからない」「Bさんがいないと業務が進まない」という状況が懸念されます。異動・退職をきっかけとした現場の混乱を招きかねません。
社内FAQが整備されていれば、ベテラン従業員が蓄積してきた経験・知識をマニュアル化でき、従業員個人に属していたスキルやノウハウを共有できます。
そのため、従業員の入れ替わりに対しても、スムーズな引き継ぎが可能といえます。
社内FAQに蓄積されていく内容は、従業員のニーズが高い情報を集約したマニュアルとして、継続的にアップデートすることをおすすめします。
関連記事:ナレッジ共有とは?得られる効果や成功のポイントを一挙解説
業務時間外でも対応が可能になる
社内FAQを作成するメリットの2つ目は、業務時間外でも対応が可能になることです。
社内FAQのサポートを必要とする社内の部署として代表的なのは、総務関連の部署・サポートデスクなど「バックオフィス」と呼ばれる部門です。
バックオフィスの部門は、夜間・土日祝日が不在になり、手薄 になりがちです。そのため、このような時間帯に発生した問題の解決は、バックオフィスの対応可能時間になるまで待たなければなりません。
社内FAQが整備されていれば、従業員自身での自己解決が可能なため、夜間・土日祝日であっても、自動対応が可能です。
スピーディーな問題解決が可能になる
社内FAQを作成するメリットの3つ目は、スピーディーな問題解決が可能になることです。
従業員に問い合わせの必要が発生したり、問題が出てきたりした場合、メール・電話を問い合わせ窓口にしていると解決までに時間がかかります。問い合わせ先の部署がすぐに対応可能な状態でない場合、さらに時間を必要とすることも考えられます。
社内FAQが整備されていれば、人を介すことなく従業員の疑問・問題を解決できます。そのため、解決までに必要な時間が短縮されスムーズに業務を進められます。
社内FAQを作成するデメリット
社内FAQは、作成することで自社にメリットをもたらす一方で、デメリットになることもあります。ここでは、社内FAQを作成するデメリットを、以下の2点から解説します。
- 作成に手間がかかる
- 従業員に浸透しない可能性がある
1つずつ見ていきましょう。
作成に手間がかかる
社内FAQを作成するデメリットの1つ目は、作成に手間がかかることです。
社内FAQの作成に着手するとき、過去の膨大な問い合わせの内容と、その回答を作成するため、担当者の工数がかかってしまいます。
また、回答をしていた部署のメンバーの経験により内容にも差が出ていた可能性もあるため、メンバー同士で話し合って最適な回答を検討することが必要です。
従業員に浸透しない可能性がある
社内FAQを作成するデメリットの2つ目は、従業員に浸透しない可能性があることです。
社内FAQを作成しても、従業員が活用しなければ問い合わせは減らず、問い合わせへの回答業務を残したまま社内FAQの運用もするという二度手間になる懸念があります。
従業員に社内FAQを浸透させるためには、問い合わせに関するルールの策定・利用促進のための継続的な周知がおすすめです。
問い合わせに関するルールの策定では、まずは社内FAQを活用したうえでそれでも回答が得られない場合は、メール・電話での問い合わせを許可するなど、解決への順序をルール化すると良いでしょう。
また、社内FAQの利用を促進させたいのであれば、社内FAQにアクセスする従業員のメリットを担保する必要があります。
たとえば、社内FAQのアップデートをしたときには必ず従業員にお知らせをするなど、常に最新の状態であることをアピールしましょう。
社内FAQの作成4つのステップ
社内FAQを作成するメリット・デメリットと自社においての必要性を照らし合わせて検討したら、社内FAQを作成する手順を見ていきましょう。
ここでは、社内FAQの作成4つのステップを以下の4つの点から解説します。
- ジャンルごとに質問をリストアップ
- 回答の作成
- テストと実際の運用
- データの更新と運用の改善
1つずつ見ていきましょう。
ジャンルごとに質問をリストアップ
社内FAQの作成4つのステップの1つ目は、ジャンルごとに質問をリストアップすることです。
過去の膨大な問い合わせの中から重要度の高い質問を選定していきましょう。
リストアップするうちに「あれもこれも重要」など質問数が増えていく可能性がありますが、その中から内容の個別性が低い質問を意識して集めていくと良いでしょう。
回答の作成
社内FAQの作成4つのステップの2つ目は、回答の作成です。
問い合わせに対する回答を数人のメンバーで行っていた場合、それぞれの回答方法に違いがあることが考えられます。そのため、どの回答方法がよりわかりやすいか、を検討したうえで回答を作成しましょう。
回答を作成するときのポイントとしては、「専門用語をできる限り使わず、誰にでもわかりやすい表現にする」「従業員が検索することを前提に、検索に使いそうなキーワードを盛り込む」「画像・動画などで直感的な理解が可能なようにする」などが挙げられます。
テストと実際の運用
社内FAQの作成4つのステップの3つ目は、テストと実際の運用です。
テストは全従業員を対象にせず、選抜されたメンバーで期間限定で行うと良いでしょう。その中で出た意見をもとに改善し運用を開始します。テスト期間が終了した実際の運用開始時点では、用意した社内FAQをすべて公開する ことがおすすめです。
開始時点で「社内FAQにアクセスすれば、問題が解決する」という印象を従業員が持つことで、利用促進につながります。
データの更新と運用の改善
社内FAQの作成4つのステップの4つ目は、データの更新と運用の改善です。
社内FAQは、一度構築したら終わりではありません。アクセス内容を分析し、よりスピーディーな自己解決に つながるよう回答を更新したり、社内FAQで解決せずに問い合わせにつながった質問への回答を作成したりして、常にブラッシュアップをすることが重要です。
更新の手間はかかりますが、問い合わせをする側・回答する側の業務がスムーズになるよう運用していきましょう。
社内FAQの作成に便利な3つのツール
社内FAQを作成する場合、ツールを活用することでスムーズな運用が期待できます。ここでは、社内FAQの作成に便利なツールを、3つ紹介します。
- 表計算ソフト
- チャットボット
- FAQツール
1つずつ見ていきましょう。
表計算ソフト
社内FAQの作成に便利な3つのツールの1つ目は、表計算ソフトです。
Excelやスプレッドシートなど、すでに多くの企業で活用している表計算ソフトであれば、導入のための費用を必要としないため、気軽に作成できます。1つのファイルに部署ごと・テーマごとにシートを用意すれば、一元管理も可能です。
また、リンクを貼ることで、関連質問にもスムーズに進めます。「コストを抑えた運営をしたい」「すでにまとめた社内FAQをすぐに活用したい」場合におすすめです。
デメリットは、検索性が低いため、質問したい内容に対する回答を探すのに時間がかかることが挙げられます。また、更新した場合に別途周知する必要があるため、運用には工夫が必要です。
チャットボット
社内FAQの作成に便利な3つのツールの2つ目は、チャットボットです。チャットボットとは、Chat(会話)とbot(ロボット)を組み合わせた造語で、従業員とのコミュニケーションを自動化できるツールです。
チャットに入力された質問に対してAIが適切な回答を判断し返答します。たとえば社内ポータルサイトのトップページに設置することで、質問のある従業員はスムーズに回答がある場所にたどり着くことができ、問題の自己解決が可能になります。
デメリットは、データが少ないと回答の精度が低くなることです。質問した従業員が満足できる回答を得られないと感じると、活用されなくなる可能性があります。
運営側が期待する利用率・解決率を達成するためには、常に最新の情報に更新するなどある程度手をかけることが必要です。
FAQツール
社内FAQの作成に便利な3つのツールの3つ目は、FAQツールです。FAQの作成に特化したツールのことをいいます。
社内FAQの管理の一元化を可能にし、高い検索性で自己解決率の向上が期待できます。また、フォーマットを用意する手間を省いたり、作成や継続的な運用にかかる工数を抑えることができます。
直感的に使えるツールも多く、従業員教育などを必要とせずスムーズに導入できます。また、解析システムが搭載されているツールもあり、アクセス数・キーワードなどを分析してより効率的な社内FAQの活用を可能にしてくれます。
デメリットは、導入や運用にツール自体のコストが必要なことです。また、継続的に中身をブラッシュアップしていかないと、便利なツールを導入しても従業員が使わなくなってしまうことが挙げられます。
便利で使いやすいツールであっても、中身のコンテンツを充実させるのは人の手にかかってくるため、「作ったら終わり」にならないようメンテナンスが必要です。
関連記事:おすすめのFAQシステム5選を紹介!導入効果・効果を高める選び方も解説
まとめ
今回は、社内FAQの基本概要、作成するメリット・デメリット、作成の手順、便利なツールを解説しました。社内FAQを作成すれば多く寄せられる問い合わせに対して、用意した回答を見ることで問題が解決できます。
膨大な量の過去の問い合わせから、社内FAQを作成するためには工数の確保が必要です。
また、せっかく作成した社内FAQが従業員に利用されなくては意味がありません。そのため、利用を促進するための、継続的なインフォメーションが必要になるでしょう。
社内FAQは、ツールを活用すれば作成・管理がスムーズに行えます。自社の運用に適した方法で運営していきましょう。
最後に、おすすめの社内FAQシステムについては「おすすめのFAQシステム5選を紹介!導入効果・効果を高める選び方も解説」の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
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