ESMにはコスト削減や業務効率化などの効果が期待できますが、導入するときには注意点も存在します。
そのため、ESMを導入するときにはポイントを押さえておかないと、成功が難しくなるかもしれません。
そこで今回は、ESMの意味や効果、注意点などを解説します。
【目次】
ESMとは
ESM(Enterprise Service Management:エンタープライズサービス管理)は、ITサービス部門に留まらず、人事・経理など、企業のあらゆる部門のサービスをITで管理する仕組みです。
後述のITサービス管理(ITSM)をベースに、より広範囲での業務効率化を目指します。
ここでは、ESMをより深く理解するための基礎知識について、以下の2点を解説します。
- ITSMとの違い
- ITILの意味
1つずつ見ていきましょう。
ITSMとの違い
ESMをより深く理解するための基礎知識の1つ目は、ITSMとの違いです。 ESMとITSM(IT Service Management:ITサービス管理)の違いは、対象範囲の広さにあります。
ITSMは、企業が従業員やクライアントに提供しているITサービスについて、提供・運用・管理を最適化するための体系的アプローチです。
一方ESMは、ITサービスに特化しているITSMから拡張し、人事・経理など組織全体の最適化を目指しています。
ITILの意味
ESMをより深く理解するための基礎知識の2つ目は、ITILの意味です。
ITIL(Information Technology Infrastructure Library)は、ITSMのベストプラクティスをまとめた国際的なフレームワークを意味します。
ITILに準拠すれば、ITサービスの品質向上・コスト削減・リスク管理などを実現できるでしょう。
ITILでは、ITサービスのライフサイクルを5つのフェーズに分類しています。
▼ITILで定義される5つのライフサイクル
- サービス・ストラテジ
- サービス・デザイン
- サービス・トランジション
- サービス・オペレーション
- 継続的なサービス改善
ESMがもたらす効果
ここでは、ESMがもたらす効果について、以下の4点を解説します。
- 従業員の労働環境改善
- コスト削減
- 業務効率化
- コンプライアンス遵守
1つずつ見ていきましょう。
従業員の労働環境改善
ESMがもたらす効果の1つ目は、従業員の労働環境改善です。
ESMで組織全体を最適化することで、自社の業務で活用しているITサービスを、よりスムーズに利用できるようになります。
そのため、従業員がこれまで業務に感じてきた負担が軽減されて労働環境が改善されるでしょう。このことは、従業員満足度や従業員エンゲージメントの向上にも寄与します。
関連記事:生産性向上が企業活動で求められている!取り組み方や成功のポイントも解説
コスト削減
ESMがもたらす効果の2つ目は、コスト削減です。
ESMで業務プロセスを自動化・効率化することで、コスト削減が期待できます。例えば、各業務のワークフローで常に最適なメンバーに業務を割り当てることで、人件費を削減できるでしょう。
また、業務フローの見直しで不要な作業を省いていくことも、コスト削減につながります。
関連記事:コストを賢く削減する具体的な方法と手順・注意点を徹底解説!
業務効率化
ESMがもたらす効果の3つ目は、業務効率化です。
ESMは、ワークフローの標準化で業務の効率化を実現します。これにより業務の手戻りが削減され、サービス提供の遅延防止や顧客満足度の向上が可能です。
また、業務全体でミスを削減できるため、業務の品質向上にもつながります。
関連記事:業務効率化ツールとは?おすすめツール7選・種類・選び方を解説
コンプライアンス遵守
ESMがもたらす効果の4つ目は、コンプライアンス遵守です。
ESMを実施する過程で詳細な監査が実施され、組織が法規制や業界標準を遵守するための体制が整備されます。
コンプライアンスを遵守することは、データ漏洩などのリスクを軽減し、企業の信頼性向上や経営の安定化に寄与するでしょう。
ESMを導入するときの注意点
ここでは、ESMを導入するときの注意点について、以下の3点を解説します。
- ESMシステムの導入・運用コスト
- 業務プロセスに変化が生じる可能性
- 従業員からの理解がないと効果が限定的
1つずつ見ていきましょう。
ESMシステムの導入・運用コスト
ESMを導入するときの注意点の1つ目は、ESMシステムの導入・運用コストです。
ESMの導入には、専用ツールの購入が必要になります。そのため、購入費用・ライセンス料・ツールを扱える人材の育成費用などが必要です。
また、もし自社業務にそぐわないツールを導入した場合、不要な機能の分、余計なコストがかかることや、買い替えでさらなる出費が必要になることもあるでしょう。
業務プロセスに変化が生じる可能性
ESMを導入するときの注意点の2つ目は、業務プロセスに変化が生じる可能性です。
ESM導入の過程で業務プロセスを見直した結果、従来の業務プロセスが変化するかもしれません。そうなると、従業員は新しい業務に戸惑い、業務効率が一時的に低下する可能性があります。
また、業務プロセスの変化に拒絶感を持つ従業員も出てくるかもしれません。
従業員からの理解がないと効果が限定的
ESMを導入するときの注意点の3つ目は、従業員からの理解がないと効果が限定的であることです。
ESMを導入して得られる効果は、従業員が有するITリテラシーに大きく左右されます。ITリテラシーが高くない従業員であれば、新しいITツールに戸惑って業務効率が低下するかもしれません。
また、必要ない場面にまでITツールを使おうとすることで、かえって業務が複雑化するケースも考えられます。
ESMを成功させるポイント
ここでは、ESMを成功させるポイントについて、以下の3点を解説します。
- 先にITSMを導入
- ESMシステムは全部署で統一
- システムのサポート体制を確認
1つずつ見ていきましょう。
先にITSMを導入
ESMを成功させるポイントの1つ目は、先にITSMを導入することです。
ESMの対象範囲は幅広いため、いきなり導入すると十分に機能しないかもしれません。そこで、ESM導入の前段階でITSMを導入し、従業員に対してITツールに慣れてもらうことがおすすめです。
ITSMを導入・運用した過程で得られた知見は、ESMを導入するときにも役立ちます。
また、そもそも社内でIT・デジタル化が進んでいない企業は、ITSMで社内のICT環境を整えてからESMに移行すれば一層の社内業務効率化を図ることができます。
ESMシステムは全部署で統一
ESMを成功させるポイントの2つ目は、ESMシステムを全部署で統一することです。
ESMでは多岐にわたるシステムを利用しますが、全部署で統一したシステムを使わないと業務が複雑化し、コスト増加にもつながりかねません。
特に、ITSMツールからESMへ移行する場合には、ツール選定から慎重に行う必要があります。ツールを選定するときには、以下のポイントに着目してみましょう。
▼ツール選定のポイント
- コストパフォーマンス
- 現場ニーズへの合致
- ITIL準拠か
システムのサポート体制を確認
ESMを成功させるポイントの3つ目は、システムのサポート体制を確認することです。
ESMツールは多機能ですが、その分、自社業務や業務プロセスに最適なツールを選ぶことは容易ではありません。
また、新しいツールの導入・運用の過程で、操作方法がわからないことやトラブルが発生することも想定されます。
導入サポート・コンサルティングや、ツールの操作方法を気軽に質問できるサポート体制が整っているか確認しましょう。
サポート体制を確認するときには、サポート対応時間や手段などがチェックポイントです。
まとめ
今回は、ESMの意味や効果、注意点などを解説しました。 ESMはITサービスに特化しているITSMよりも拡張した概念で、ITで企業のあらゆる部門を管理するものです。
ESMで業務効率化や従業員の労働環境改善などの効果が期待できる反面、システム導入のコストや業務プロセスに変化が生じる可能性には留意する必要があります。
また、ESMを導入していない場合は、まずはITSMから導入すると無理なくESMへの移行ができるでしょう。
用いるシステムは全部署で統一すると、現場での混乱は最小限に食い止められます。
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