複数の工程が絡み合う現場では、1つの遅延リスクが全体の納期の遅れにつながることもあるため、適切な手順を踏んで進めることが重要です。
そこで今回は、工程管理の目的・手順・方法を解説します。また、図やグラフを用いて視覚化する方法も紹介しますので、ご一読ください。
【目次】
工程管理とは
ここでは、工程管理について、以下の2点を解説します。
- 工程管理とは
- 生産管理との違い
1つずつ見ていきましょう。
工程管理とは
工程管理とは、主に製造や建築の現場で、製品の生産や竣工を目指して、各工程の進行を計画・管理することを指します。
例えば、製造の現場では、材料の調達から加工・検査・出荷までの一連の作業が工程管理の対象です。
工程管理は、生産ラインの進行を円滑に保ち、スムーズにプロジェクトを完遂させるためには欠かせません。
各工程が計画通りに進行するために工程を調整し、生産性の向上を目指すことが工程管理の目的です。
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生産管理との違い
工程管理は、主に建物や製品の納期管理を中心に行い、各工程が計画に沿って進行できるよう調整する業務です。
材料の加工や運搬、検査など、製造の流れをスムーズに進めることを目的としています。一方で生産管理は、生産ライン全体を管理対象とし、より広範な領域をカバーしていきます。
具体的には、生産計画の立案・原材料の調達・在庫管理・人員の配置・出荷管理・売上管理など、製品が顧客の手元に届くまでのプロセス全体が管理対象です。
つまり、工程管理は生産管理の一部分であり、生産管理全体の効率化を支える重要な要素の1つです。
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工程管理の目的
ここでは、工程管理の目的について、以下の4点を解説します。
- 生産性の向上
- 品質の安定化
- 納期の遵守
- 原価の削減
1つずつ見ていきましょう。
生産性の向上
工程管理の目的の1つ目は、生産性の向上です。 工程管理を進めることで、各工程の無駄を削減し、生産フロー全体の効率化が実現します。
ここで言う生産性とは、人材や設備といった経営資源に対して、どれだけの成果を生み出したかを測る指標のことです。
生産性を高めるためには、少ないリソースで最大限の成果を生み出す必要があります。 また、人員や機械設備を活用して、生産の質と量の両方を向上させることも欠かせません。
さらに、工程管理にリスク管理を組み込むことで、不測の事態にも柔軟に対応できるでしょう。
関連記事:生産性向上が企業活動で求められている!取り組み方や成功のポイントも解説
品質の安定化
工程管理の目的の2つ目は、品質の安定化です。 生産量が増加すると、不良品や品質のばらつきが発生するリスクが高まります。
品質が低下すると、顧客の信頼を損ない、企業のブランドイメージに悪影響を与えることも少なくありません。経済的損失につながる品質の低下は、未然に防ぐ必要があります。
そのため、各工程の進捗と必要なリソースを常に把握し、無理のない生産スケジュールを構築することが大切です。
スケジュールに余裕を持たせた管理体制を築くことで、急なトラブルにも柔軟に対応でき、製品の品質を一定水準に保つことができます。
さらに、工程ごとのチェック体制を強化することで、不良品の早期発見・修正が行え、品質の向上が見込めます。
工程管理は、安定した品質を確保しながら生産の効率化を図るためにも不可欠です。
関連記事:プロジェクト管理での品質管理において押さえるべきポイントを徹底解説!
納期の遵守
工程管理の目的の3つ目は、納期の遵守です。 顧客の信頼を得るためには、求められる製品やサービスを、期日までに提供しなければなりません。
納期の遅延は、顧客満足度の低下や取引先との関係悪化を招くだけでなく、企業の信用や収益にも大きな打撃を与えます。
納期を守るためには、進捗状況を常に把握し、状況に応じて生産スケジュールを調整するといった対策が必要です。
また、工程の滞りを防ぎ、スムーズな生産ラインを維持することも効果的です。工程全体を統制することで、想定外の事態にも迅速に対応でき、製品の品質確保と納期の厳守が可能になるでしょう。
原価の削減
工程管理の目的の4つ目は、原価の削減です。 生産プロセスの効率化は、不要な工程や時間削減につながるため、全体のコスト削減が見込めます。
また、工程管理を徹底することで、必要な原材料の量や種類を正確に把握でき、過剰在庫を防ぐことも可能です。
在庫を最小限に抑えることで、余剰品が発生するリスクを減らし、保管スペースの最適化も行えるでしょう。加えて、倉庫の維持や在庫管理にかかるコストの削減も期待できます。
無駄を省きながら高品質な生産を実現し、企業の利益率向上に貢献するためにも、工程管理は欠かせません。
関連記事:製造業でのコスト削減とは?具体策5つと削減するときのコツも解説
工程管理の4つの手順
ここでは、工程管理の手順について、以下の4点を解説します。
- 計画を立てる(Plan)
- 計画に基づいて実施する(Do)
- 結果を評価する(Check)
- 改善案を実施する(Action)
1つずつ見ていきましょう。
計画を立てる(Plan)
工程管理の手順の1つ目は、計画を立てる(Plan)ことです。
製品の納品に至るまでのプロセスを見通し、必要な工程・所要時間・担当者・コストをバランス良く組み立てていきます。
過去に同様の製品を手掛けた場合は、そのときのデータを活用すれば、より現実的な計画を立てられます。計画が完成した後は、各部門やチームが随時確認できるように共有しましょう。
情報の透明性を高めることで、スムーズな進行管理が期待できます。
計画に基づいて実施する(Do)
工程管理の手順の2つ目は、計画に基づいて実施する(Do)ことです。
計画が整ったら、各工程を実行に移していきます。実行段階では、計画通りに作業が進行しているかどうか、定期的に進捗状況を確認することが欠かせません。
進捗と計画のズレが生じた場合は、どの部分に問題があったのかを具体的に記録しましょう。
進捗記録は、次の評価のフェーズでの改善につながり、今後の工程管理をより精度の高いものにするために重要です。
結果を評価する(Check)
工程管理の手順の3つ目は、結果を評価する(Check)ことです。 計画を実行した後は、各工程の進行状況や成果を振り返り、評価していきます。
問題が発生した場合は、原因を特定し、次の「改善」フェーズでの対策に活かします。評価の段階では、納期の遅延や人員配置の不備などの課題に早期に気付けるため、迅速な対応が可能です。
こうした情報をまとめ、チーム全体に共有することで、認識を揃え、工程の精度を高めることが可能です。
改善案を実施する(Action)
工程管理の手順の4つ目は、改善案を実施する(Action)ことです。 評価(Check)で明らかになった原因をもとに、具体的な改善策を策定し、実施します。
改善によって得られた成果や課題は、次の計画に反映させ、プロセスを向上させましょう。PDCAサイクルは、一度実施して終わりではなく、繰り返し実行することが肝心です。
状況の変化に応じて計画を柔軟に見直すことで、より効果的な工程管理が実現できます。
継続的にPDCAを回し続けることで、管理体制の精度が向上し、より安定した成果が期待できるでしょう。
工程管理で用いられる図・グラフ
ここでは、工程管理で用いられる図・グラフについて、以下の4点を解説します。
- ガントチャート
- ネットワーク図
- バーチャート
- 累積グラフ
1つずつ見ていきましょう。
ガントチャート
工程管理で用いられる図・グラフの1つ目は、ガントチャートです。 ガントチャートは、縦軸に作業項目を並べ、横軸を時間として各工程を表す図のことを指します。
各工程の開始日や完了日を、視覚的に把握することが可能です。複数の作業項目の管理に使われるガントチャートは、各タスクの進行状況の可視化に役立ちます。
ただし、工数の詳細が見えにくく、タスク間の依存関係を表すのが難しいという課題があるため、他の図と併用することもあります。
関連記事:ガントチャートの作り方を解説!注意点・おすすめツールも紹介
ネットワーク図
工程管理で用いられる図・グラフの2つ目は、ネットワーク図です。 ネットワーク図では、各工程の前後関係や流れを視覚的に表していきます。
各項目の順序や工数が円と矢印を用いて表現されるため、タスク同士の関係性を把握したいときに便利です。
特に、前の工程が完了しないと次の工程に進めないといった、タスク間の依存度が高いプロジェクトでは役立つでしょう。
見た目はシンプルな反面、各タスクの進捗状況が分かりにくいというデメリットもあります。
バーチャート
工程管理で用いられる図・グラフの3つ目は、バーチャートです。 バーチャートは、縦軸に進捗率、横軸に作業日数を記載して管理する工程表のことを指します。
バーチャートは、作業項目と開始日、完了日を記載するだけで済むため、容易に作成できる点が魅力です。
ただし、タスク同士の関係性が見えづらく、重要な経路を見落としやすいため注意が必要です。手軽に導入できるため、初めて工程管理に取り組む場合の図としては、試す価値があります。
累積グラフ
工程管理で用いられる図・グラフの3つ目は、累積グラフです。 累積グラフは、「出来高累計曲線」や「Sカーブ」とも呼ばれます。
生産や工事のスケジュールの遅れなど、全体の進捗状況を把握できるという利点があります。ただし、各作業にかかる期間や完了日は表していないため、タスクの順序や必要な日数は把握できません。
全体の進捗状況を把握したい場合に適しています。
工程管理を行う3つの方法
ここでは、工程管理を行う方法について、以下の3点を解説します。
- ホワイトボード・紙
- Excel・Googleスプレッドシート
- ツール
1つずつ見ていきましょう。
ホワイトボード・紙
工程管理を行う方法の1つ目は、ホワイトボード・紙です。 紙やホワイトボードを使って工程表を作成し、掲示する方法は容易に始められ、コストを抑えられるというメリットがあります。
しかし、手作業で記載していくため、更新するのに手間がかかります。
また、最新の情報をチームメンバーにリアルタイムで共有するのが難しく、過去のデータとの比較や、追跡が行えない点には注意が必要です。
関連記事:ホワイトボードでの業務管理が簡単に!おすすめツール5選とメリット・デメリット
Excel・Googleスプレッドシート
工程管理を行う方法の2つ目は、Excel・Googleスプレッドシートです。 ExcelやGoogleスプレッドシートを活用した管理方法は、特別なシステムを導入せずに済むため、コストを抑えられる点が魅力です。
テンプレートを作成しておけば、効率的に作成できます。また、Googleスプレッドシートを使うと複数のメンバーが同時にアクセスして更新できるため、リアルタイムでの情報共有が可能となります。
一方、Excelの場合は同時編集ができないため、他のチームメンバーが作業中かどうか、確認しながら進める必要があります。
また、Excelでの自動化には限界があるため、プロジェクトが大規模になるほど、管理が難しくなるという課題があります。
関連記事:スプレッドシートでもガントチャートを作成できる!メリットや作り方を解説
ツール
工程管理を行う方法の3つ目は、ツールです。
工程管理ツールには、専用の工程管理システムとして販売されているものや、プロジェクト管理・タスク管理ツールの一部機能として組み込まれているものがあります。
ツール化することで進捗状況の可視化が容易に行え、アラート機能や権限管理といった多彩な機能を活用できる点も魅力です。
従来の工程管理表と異なり、システム上で過去のデータから最新の進捗までを一元管理できるため、進捗状況の把握にも役立ちます。
また、閲覧や編集に権限の設定を付与すれば、情報の安全性を高めることも可能です。 近年、多くの企業が工程管理向けのITツールを導入しています。
例えば、CrewWorks(クルーワークス)のようなツールでは、ガントチャート機能が利用できるため、工程管理作業を効率化できます。
CrewWorks(クルーワークス)は、ガントチャートでのスケジュール管理、タスク間の親子関係の設定、作業工数の入力など、工程管理に役立つ機能が多数搭載されています。
管理表を作成するだけでなく、ファイル共有やビジネスチャットも利用できるため、工程管理業務を効率的に進められます。
まとめ
今回は、工程管理の目的・手順・方法を解説しました。工程管理を正しく行うことで、業務効率が向上し、コストの削減にも役立ちます。
さらに、図を用いた説明や具体的な方法を参考にすることで、理解が深まり、次の計画に活かすことができます。
工程管理をスムーズに行うためのシステムを取り入れ、プロジェクトの完遂を目指しましょう。
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