属人化が起こると、業務の停滞やトラブル発見の遅延が起こる可能性があるため、解消を目指す必要があります。
そこで今回は、業務の属人化の原因・リスク・改善するためのステップを解説します。
【目次】
業務の属人化とは?
業務の属人化とは、特定の業務が一部の個人に依存している状態を指します。属人化が起こると、重要な業務知識や技能が特定の従業員に集中してしまい、その従業員が不在の場合には、業務が停滞する恐れがあります。
そのため、属人化の解消は、組織が経営を持続していくためには欠かせません。
業務の属人化が起こる3つの原因
ここでは、業務の属人化が起こる原因について、以下の3点を解説します。
- 業務の専門性が高い
- 業務に追われて情報共有できない
- 個人成果主義の風潮がある
1つずつ見ていきましょう。
業務の専門性が高い
業務の属人化が起こる原因の1つ目は、業務の専門性が高いことです。専門性が高い業務は、特定のスキルや知識、経験が必要になるため、身につけている人材が少ないと属人化が起こります。
スキルや知識を持った特定の従業員が不在になると、業務が滞る恐れがあるため注意が必要です。
また、新入社員がその業務を担うには、スキルや技術を習得するために時間と労力がかかることも、属人化が進んでしまう原因の1つです。専門性の高い業務は、知識や経験が蓄積される一方で、属人化を生じさせるリスクがあります。
業務に追われて情報共有できない
業務の属人化が起こる原因の2つ目は、業務に追われて情報共有できないことです。
日常業務が多忙な中では、従業員が自分の持つ知識や経験を他の従業員と共有する時間が取れないというケースも珍しくありません。
すると、業務に必要な情報や技術が限られた人数の従業員間でのみ共有される状況が生まれます。
情報共有の不足は、新たな人材の育成を妨げ、業務の効率性や持続可能性にも影響を与えかねません。
情報の伝達が不十分だと、一部の従業員だけしか、特定の業務を遂行できないという状態が続いてしまいます。
関連記事:情報共有を効率化するコツ!仕組みの作り方やツールの選び方も解説
個人成果主義の風潮がある
業務の属人化が起こる原因の3つ目は、個人成果主義の風潮があることです。
個々の成果を重視していると、従業員は自分の成功や昇進を優先し、他の従業員と情報や技術を共有するのを嫌がるようになります。結果として、知識や技術が特定の個人に集中してしまうでしょう。
また、個人成果主義の環境では、チームワークや協力を促進するよりも、個人同士の競争を激化させることになり、組織全体の効率性や革新性に悪影響を及ぼす可能性があります。
業務の属人化が引き起こすリスク
ここでは、業務の属人化が引き起こすリスクについて、以下の4点を解説します。
- 業務が停滞し生産性が低下する
- 品質管理が困難になる
- トラブル発生時に対応が遅れる
- ナレッジが蓄積されない
1つずつ見ていきましょう。
業務が停滞し生産性が低下する
業務の属人化が引き起こすリスクの1つ目は、業務が停滞し生産性が低下することです。特定の個人に業務知識やスキルが集中しているため、その人が休暇を取ったり、退職したりすると、その業務が停滞してしまいます。
場合によっては、組織の全体的な業務の流れに支障をきたし、生産性の低下を招きかねません。業務が滞ると、クライアントの信頼を失墜することにもつながるため、解決策を講じる必要があるでしょう。
関連記事:生産性向上が企業活動で求められている!取り組み方や成功のポイントも解説
品質管理が困難になる
業務の属人化が引き起こすリスクの2つ目は、品質管理が困難になることです。特定の個人の経験や技術に依存する業務は、その従業員が不在のときに品質を維持するのが難しくなってしまいます。
他の従業員が同じレベルの結果を出すためには相応の知識や技術が必要になるため、一定の品質で提供することができません。
サービスの質にばらつきが生じ、顧客満足度の低下やブランドイメージの損傷を招く恐れがあるでしょう。
トラブル発生時に対応が遅れる
業務の属人化が引き起こすリスクの3つ目は、トラブル発生時に対応が遅れることです。 業務が属人化していると「他の人には自分の業務がわからないから」と、問題を自分だけで解決しようとする傾向があります。
しかし、一人で問題が解決できないと結果的に対応に時間がかかり、かえって問題が大きくなる恐れがあります。最悪の場合、トラブルを隠蔽する行動に出ることもあるため注意が必要です。
速やかな問題解決が求められる状況では、対応の遅れが致命的な結果を招くこともあるため、組織の信頼性に悪影響を与えるでしょう。
ナレッジが蓄積されない
業務の属人化が引き起こすリスクの4つ目は、ナレッジが蓄積されないことです。業務が特定の個人に依存すると、その従業員が持つノウハウや知識も同様に個人に依存することになります。
業務に関するノウハウや知識は、企業にとって価値ある資産ですが、共有されなければ新しいアイデアや業務の改善に活かされることはありません。
もし担当者が退職してしまえば、そのノウハウや知識も失われてしまうリスクがあります。
関連記事:ナレッジ共有とは?得られる効果や成功のポイントを一挙解説
属人化を避けたい業務
ここでは、属人化を避けたい業務について、以下の4点を解説します。
- バックオフィス業務
- 情報セキュリティ業務
- カスタマーサポート業務
- 営業業務
1つずつ見ていきましょう。
バックオフィス業務
属人化を避けたい業務の1つ目は、バックオフィス業務です。バックオフィス業務は、経理・人事・事務など、どの業種にも必要な業務を担います。
バックオフィス業務が属人化すると、組織の運営効率が低下してミスが起こるリスクが増加します。たとえば、給与計算や請求書の処理などが特定の従業員に依存している場合、その従業員が欠けると重要な業務が停止してしまいかねません。
バックオフィス業務を標準化することで、業務停滞のリスクを低減し、業務の効率化が図れるでしょう。
関連記事:バックオフィス業務を効率化する方法は?課題や解決で見込まれる効果も解説
情報セキュリティ業務
属人化を避けたい業務の2つ目は、情報セキュリティ業務です。情報セキュリティ業務は、組織のデータ保護やシステムの安全を確保する役割を担っているため、特定の従業員に業務が依存すると、セキュリティ対策業務が維持できません。
たとえば、セキュリティの問題が起こった場合の対応が、一人または少数の従業員に集中している場合、その人たちがいないと適切な対応が遅れる恐れがあります。
そのため、情報セキュリティ業務に関する知識と対応方法を共有し、複数の従業員が対応できる体制を整えておくことが重要です。
カスタマーサポート業務
属人化を避けたい業務の3つ目は、カスタマーサポート業務です。カスタマーサポート業務は、顧客と直接やりとりをして、顧客の信頼と満足を築く重要な役割を担います。
担当者によって応答の速さや内容が異なると、お客様の信頼を損ね、顧客満足度が下がりかねません。
業務フローを統一し、応対の仕方を共有することで、カスタマーサポート業務の効率と生産性を向上させる効果が見込めます。そのため、カスタマーサポート業務における属人化の解消は積極的に取り組むべき課題です。
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営業業務
属人化を避けたい業務の4つ目は、営業業務です。営業業務では、担当者が自分の裁量で顧客に対応し、成績を上げようと個人で動くことが多いため、営業の知識や方法が共有されにくい業種です。
また、テレワークの普及により、誰がどの顧客を担当しているのかや進捗状況の共有が難しくなり、属人化がさらに進んでいる可能性があります。
属人化を解消することは、営業チームの問題を解決するだけでなく、個々の営業知識を共有することで全体の成績を向上させる効果もあります。営業職においても、属人化を解消することは、組織全体の売上を伸ばすために必要です。
関連記事:営業におけるナレッジ共有の効果的な進め方とは?実施の重要性や具体例も紹介
業務の属人化を解消するための5つのステップ
ここでは、業務の属人化を解消するための5つのステップについて、以下の5点を解説します。
- 業務を洗い出す
- 業務をマニュアル化する
- 業務の進捗を可視化する
- 従業員に周知して運用を始める
- 改善・更新を行っていく
1つずつ見ていきましょう。
業務を洗い出す
業務の属人化を解消するためのステップの1つ目は、業務を洗い出すことです。各部署やチームがどのような業務を行っているか、それぞれの業務にどれだけの時間がかかっているかを明確にします。
このとき、特定の個人に依存している業務が何かを特定することが重要です。どの業務がマニュアル化や改善の対象であるかを把握したり、不要な業務を削減したりしてリソースを最適化しましょう。
業務をマニュアル化する
業務の属人化を解消するためのステップの2つ目は、業務をマニュアル化することです。マニュアル化とは、業務の手順を文書化し、誰でもその業務を理解して実行できるようにすることを意味します。
マニュアル文書には、業務の目的・手順・使用するツールやシステム・注意点などを詳細に記載していきます。マニュアル化された業務は、新しい従業員の教育や業務の一貫性の保持にも役立つでしょう。
関連記事:文書管理マニュアルの作り方!作成時のポイントも詳しく解説
業務の進捗を可視化する
業務の属人化を解消するためのステップの3つ目は、業務の進捗を可視化することです。進捗を可視化するには、ガントチャートやタスク管理ツールを使用し、各従業員が現在どの業務を担当しているか、どの段階にあるかを明確にしていきます。
業務の情報を可視化することで、担当者が個人で保持している知識や進捗を共有しやすくなります。また、誰が何をしているのかが明確になるため、業務の引き継ぎもスムーズに行え、属人化の解消につながるでしょう。
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従業員に周知して運用を始める
業務の属人化を解消するためのステップの4つ目は、業務マニュアルを従業員に周知し、運用を始めることです。
業務マニュアルは、実際に現場でしっかりと活用されなければ、属人化は解消されません。従業員が正しい手順で業務を進められるよう、勉強会やレクチャーを定期的に開催し、業務の進め方を現場に定着させることが重要です。
改善・更新を行っていく
業務の属人化を解消するためのステップの5つ目は、改善・更新を行っていくことです。業務マニュアルの運用後には、従業員からのフィードバックや業務実施中に見えてきた問題点を洗い出し、マニュアルやプロセスの改善を図ります。
継続的にマニュアルを見直していくことで、マニュアルを最新の状態にしておくことが可能です。たとえば、毎年一度は業務フローや手順書を見直して更新するようにスケジュールを組むことで、業務を継続的に標準化し、改善していけるでしょう。
関連記事:業務標準化とは?進め方やメリット・デメリットとともに解説
まとめ
今回は、業務の属人化の原因・リスク・改善するためのステップについて解説しました。
属人化は、生産性の低下やトラブル対応の遅延、業務の停滞などのリスクを引き起こすため、解消を目指す必要があります。
属人化を解消するためには、業務の進捗状況の可視化と、業務マニュアル化が有効です。効率的に属人化を解消するためにも、タスク管理ツールや文書管理ツールの導入を検討してみてください。
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