しかし、退職や異動などで人材の流動性が高くなり、引き継ぎの機会も増加している中で継続してその知識を効果的に共有し、組織全体で活用することは容易ではありません。
そこで今回は、専用ツールの利用方法や、定期的な研修・ワークショップの実施の効果、さらにデジタルコミュニケーションツールの活用方法などを紹介します。
また、具体的なナレッジの例として、成功事例や専門知識、知的資産、顧客情報の共有方法にも触れていきます。
【目次】
ナレッジの効果的な共有方法を理解するために
ここでは、ナレッジの効果的な共有方法を理解するためのポイントとして、以下の3点を解説します。
- 企業におけるナレッジ共有の重要性
- 形式知と暗黙知の違い
- ナレッジの形式知化
1つずつ見ていきましょう。
企業におけるナレッジ共有の重要性
ナレッジの効果的な共有方法を理解するためのポイントの1つ目は、企業におけるナレッジ共有の重要性です。
企業におけるナレッジ共有は、単なる情報の伝達を超えた深い意義があります。業務効率の向上から始まり、新入社員の研修時間や新人の教育時間の短縮にも繋がります。
例を挙げると、新しい業務手順や技術的なスキルやノウハウを持った先輩からの直接のアドバイスや過去の事例を知ることで、新入社員や経験の浅い社員も、より迅速に業務に慣れることができます。
さらに、ナレッジ共有は企業文化の形成にも役立ちます。企業の伝統や価値観、ビジョンやミッションは、日常の業務やコミュニケーションを通じて伝わります。
ナレッジ共有の環境が整っている企業では、従業員同士の絆や連帯感が高まり、より一体感を持って業務に取り組むことができるでしょう。
また、イノベーションの促進という点でも、ナレッジ共有は非常に重要です。過去の経験や失敗の原因を学ぶことで、新しいアイディアや改善策を生み出す土壌が作られます。
ナレッジの属人化を解消し、従業員が必要な情報を迅速に入手することで、同じミスやトラブルを繰り返すリスクが低減し迅速な対応が可能になり、新たな課題にも過去の知識を活用して取り組むことができます。
これにより、業務の進行がスムーズとなり、企業全体としての効率性と生産性が大きく向上します。
関連記事:ナレッジ共有とは?得られる効果や成功のポイントを一挙解説
形式知と暗黙知の違い
ナレッジの効果的な共有方法を理解するためのポイントの2つ目は、形式知と暗黙知の違いです。
知識を共有するとき、その性質に注意を払うことが必要です。具体的には、「形式知」と「暗黙知」という2種類のカテゴリーに分けられる知識の性質を理解することが鍵となります。
形式知とは、一般的に文章や図表、数式などを使って比較的容易に他者に伝えることができる知識です。例えば、手順書やマニュアル、論文などが該当します。
形式知は、客観的かつ理性的な知識であり、明確な形で記録され、誰もがアクセスして学べるものとなっています。
一方で、暗黙知はその名の通り、形になっていない、感覚や経験に基づく知識を指します。例えば、自転車の乗り方や手作業の技術などは言葉で説明するのが難しく、主に経験を通じて学ぶ知識です。
暗黙知は、個人の経験や感覚、感じ取ったことを基にしているため、言語化し簡単に他者に伝えることは難しいのが特徴です。
ナレッジを効果的に共有するためには、暗黙知を形式知に変換し、それを整理・集約することが大切になります。
関連記事:暗黙知とは?ナレッジマネジメントで形式知化すべき理由・役立つツールも解説
ナレッジの形式知化
ナレッジの効果的な共有方法を理解するためのポイントの3つ目は、ナレッジの形式知化です。
ナレッジの形式知化とは、個々の従業員が持つ経験や技術、考え方などの知識を、文書やデータとして明確に記録・蓄積することです。この手法は「SECI(セキ)モデル」と呼ばれ、ナレッジマネジメントの理論のひとつです。
例えば、業務手順や使用ツールの使い方、あるいは特定の課題への対処方法などをアウトプットし明文化することで、新たなメンバーや他部署の従業員たちもその有益な情報に簡単にアクセスし、学習できるようになります。
企業内での形式知の代表例として、手順書やマニュアルが挙げられます。これらのドキュメントは、日常の業務を円滑に行うためのガイドラインとなり、業務の標準化やエラーの減少に貢献します。
また、これによって組織内の知識が一元化され、全員が同じ基準で行動することが可能となり、組織としての業務効率化やサービスの品質が大きく向上します。
つまり、形式知化は、ナレッジを組織全体の資産として確立し、それを活用して業務の質や効率を高めるための重要な取り組みと言えます。
関連記事:ノウハウとは?ビジネスシーンにおける意味や使い方と活用メリットをわかりやすく解説
ナレッジを効率よく共有する方法
ここでは、ナレッジを効率よく共有する方法について、以下の3点を解説します。
- 専用ツールの利用
- 定期的な研修やワークショップの実施
- デジタルコミュニケーションツールの活用
1つずつ見ていきましょう。
専用ツールの利用
ナレッジを効率よく共有する方法の1つ目は、専用ツールの利用です。
例えば社内Wikiや文書管理システム、マニュアル管理システムなどが挙げられます。これらのツールは、従業員一人ひとりが持つ経験や知識を組織全体で管理・共有するためのものです。
例えば、ある部署が独自に培ったノウハウや手法を、他の部署や新入社員と共有する場合、このようなツールを通じて簡単にアクセスできるようになります。
そのため、専用ツールの利用により、情報を検索するときの手間が大幅に削減されるメリットがあります。また、組織全体としての知識のレベルアップを実現できます。
関連記事:ナレッジ共有ツールのおすすめ13選を徹底解説!得られる効果や導入のポイントも紹介
定期的な研修やワークショップの実施
ナレッジを効率よく共有する方法の2つ目は、定期的な研修やワークショップの実施です。
単に情報を文字や数字として共有するだけでなく、それを実際の業務にどう活かすかを具体的に示すことができるため、非常に実践的です。
研修やワークショップでは、形式知として文書化された情報やノウハウを基に、その知識の背景や意義、そして使用方法を詳しく解説します。
さらに、実際の業務シーンを想定したケーススタディやロールプレイングを取り入れることで、ナレッジを日々の仕事にどう適用するかを具体的に紹介できます。
このような取り組みを通じて、従業員は新しい情報や技術をただ知るだけでなく、それを実際の業務にどう結びつけるかを理解できます。その結果、知識の共有が効率化され、組織全体の生産性や質が向上する可能性が高まります。
デジタルコミュニケーションツールの活用
ナレッジを効率よく共有する方法の3つ目は、デジタルコミュニケーションツールの活用です。
デジタルコミュニケーションツールを利用することで、ナレッジを共有するハードルが下がり、情報の迅速な共有や多方向のコミュニケーションが可能になります。
チャットツールやメール、掲示板、FAQ、社内SNSなどの人気のツールは、従業員間の質問や情報交換の場として非常に効果的です。
ツールでは、テキスト形式だけでなく画像・動画やWord・Excel・PDFファイルなども簡単に共有できます。これらのツールを活用することで、形式知の情報を瞬時に共有したり、多くの人々との議論をリアルタイムで行ったりできます。
また、近年はリモートワーク・テレワークが浸透する中で、従来のオフィスでのコミュニケーションと同じような効果を得るためには、デジタルツールの活用が不可欠です。
これにより、時間や場所の制約を乗り越え、効率的なナレッジの共有が実現できます。但し、ツールには企業の資産となる情報や機密情報が登録・保存されるため万全のセキュリティが確保されていなければなりません。
関連記事:ビジネスチャットとは?おすすめツール7選と活用のメリットや主な機能を比較解説
対象となるナレッジの具体例と共有方法
ここでは、対象となるナレッジの具体例と共有方法について、以下の4点を解説します。
- 成功事例
- 専門知識
- 知的資産
- 顧客情報
1つずつ見ていきましょう。
成功事例
対象となるナレッジの具体例と共有方法の1つ目は、成功事例です。
成功事例の共有は、企業内でのナレッジの宝庫とも言える方法です。具体的なプロジェクトや業務での成功体験や、それに至ったプロセスを共有することで、他のチームや従業員が同じ成功を目指すときの指針となります。
この情報は、新しい挑戦をするときの方針を決める手助けとなり、過去の失敗を回避するための鍵ともなります。成功事例の共有は、組織全体の業績向上とリスク低減の双方に寄与する重要な手法です。
専門知識
対象となるナレッジの具体例と共有方法の2つ目は、専門知識です。専門知識の共有は組織の成長を促進する鍵となる要素です。
多くの企業には、特定の分野で豊富な経験と専門知識を持つ優秀な人材やベテラン従業員がいます。彼らの知識は、組織全体の資産として非常に価値があります。
しかし、この知識が属人化していると、その価値は十分に活用されません。そこで、セミナーやワークショップの形式で、専門知識を他の担当者と共有することが重要です。
こうした取り組みを通じて、組織全体の知識レベルを高め、業務の質や効率を向上させることができます。
知的資産
対象となるナレッジの具体例と共有方法の3つ目は、知的資産です。企業や組織は、特許、著作権、ノウハウなど、さまざまな知的資産を持っています。
これらの資産は、その組織の競争力や価値を形成する大きな要因となります。しかし、適切に情報共有されていないと、重複した取り組みや、知的資産の不適切な利用によるリスクが生じる可能性があります。
そこで、従業員全体に知的資産の概要や利用のガイドラインを明確に伝えることで、組織の健全な成長を促すことができます。
知的資産の共有により、従業員は知的資産の有効な利用方法や、潜在的なリスクを避けるための方針を理解し、日々の業務に活かすことができるようになります。
顧客情報
対象となるナレッジの具体例と共有方法の4つ目は、顧客情報です。
顧客からのフィードバックや取引の履歴などの情報は、組織全体の価値を高めるための貴重な資源です。これを組織内で適切に共有し分析することで、各部門やチームが顧客の真のニーズを深く把握できるようになります。
さらに、新しいビジネスチャンスの発掘やサービスの質を向上させるヒントも得られます。例えば、一部の顧客からの特定の要望を元に新しい製品ラインを考えたり、別の部署のサービスを推奨したりすることでクロスセルの機会を増やすことができます。
このように、顧客情報を有効に活用し共有することは、組織の競争力を高めるための重要なステップとなります。
関連記事:社内ナレッジの共有方法を徹底解説!効果・注意点・方法・おすすめツール8選も紹介
まとめ
今回はナレッジ共有の効果的な方法や具体例について詳しく解説しました。ビジネスを成功させるには、目的とルールを決めてナレッジの共有を行うことがとても大切です。
キャリアが長く成果を上げている従業員の発想や知見をメンバー全員で共有することで、自社のさらなる業績アップにつながり新しいアイディアが生まれやすくなります。
また、成功した事例や、特定の専門知識、会社の大切な顧客情報などもデジタルコミュニケーションツールなどを活用し、共有する仕組みを構築し習慣化させることで、ビジネスはもっと加速します。
ナレッジを効果的に共有することで、新しい発見や連携のチャンスを増やし、企業全体の成長へとつなげていきましょう。
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